むし歯予防のためのリスクアセスメント「CAMBRA」を用いて自分に合ったむし歯予防を!

監修者

水野裕文
院長
ちあきあじさい歯科

経歴

2004年
愛知工業大学名電高等学校 卒業
2012年
朝日大学歯学部歯学科 卒業
奈良県立医科大学付属病院 口腔外科 入局
2014年
岡山大学大学院医歯薬総合研究科
予防歯科学分野 入学
2018年
医療法人社団 ササキデンタルクリニック 就職
2020年
ちあきあじさい歯科 開院

資格

日本口腔インプラント学会 所属
日本歯周病学会 所属
日本口腔衛生学会 認定医取得
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・博士 学位取得
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
予防処置学分野 研修登録医
朝日大学歯学部 口腔感染医療学
社会口腔保健学分野 非常勤講師
朝日大学歯科衛生士専門学校 非常勤教員

近年、病気になってから治療するのではなく、病気にならないように予防しようという考えが重要視されています。特に「むし歯」は、初期段階では自覚症状が現れにくいです。しかし放置すると歯を失ってしまう可能性もある病気です。

むし歯予防の新しいアプローチとして注目されている「CAMBRA」は一人ひとりのリスクに合わせて予防計画を立てる、個別最適化されたむし歯の予防方法です。

今回は、CAMBRAを活用しながら個人個人に合ったむし歯予防の対策をご説明していきます。この記事を読んで、ぜひご自身に合ったむし歯予防に取り組むきっかけとしてください。

なぜむし歯になるの?

日頃から歯磨きはしているのにむし歯ができやすい…。とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。では、なぜむし歯ができるのか、まずはその原因をみていきましょう。

むし歯ってどんな病気?

むし歯は、口の中の細菌が、食べ物に含まれる糖を分解して酸を産生し、その酸によって歯が溶かされてしまう病気です初期段階では自覚症状が現れにくいため、気づかないうちに進行してしまうことも少なくありません。歯が進行すると、痛みや腫れ、歯が欠損するなどの症状が現れます。日常生活に支障をきたす可能性も。重症化すると、歯の神経を取り除く根管治療や、歯を抜歯しなければならないケースも出てきます。

むし歯予防が重要!

むし歯は、一度進行してしまうと、自然に治ることはありません。治療には、費用や時間、そして少なからず痛みを伴います。また、治療によって歯を削ると、歯の寿命が短くなってしまう可能性もあります。そのため、むし歯は、治療よりも予防が何よりも大切なのです。

従来のむし歯予防って…?

従来のむし歯予防では、歯磨き指導や食生活指導などが一般的でした。もちろん、これらの方法もむし歯予防には効果的です。ですが、すべての人に同じ効果があるとは限りません。例えば、歯並びや唾液の分泌量、生活習慣などによって、むし歯リスクは大きく異なります。また、「生まれつき歯が弱い」「子どもを産むと歯が1本なくなる」などと耳にすることもあります。それは本当でしょうか。そこで、今注目されているのが、一人ひとりのリスクに合わせた予防方法「CAMBRAです。

「CAMBRA」でわかる!むし歯になるリスクを高める要因

従来、むし歯予防として、「歯磨きをしっかりしましょう」「甘いものを控えましょう」といったように、すべての人に共通した情報が中心でした。しかし、同じように生活していても、むし歯になりやすい人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか?

それは、むし歯になるリスクには個人差があるからですそこで重要になるのが、一人ひとりのリスクを正しく評価する作業です。むし歯のリスクを評価すると、自分に合った予防方法を知り、効果的にむし歯を防げるのです。

一人ひとりのむし歯の予防リスクを評価する方法は様々なものが存在します。今回はその中のCAMBRAというシステムについてご紹介します。

CAMBRAでは、6歳以上を対象に様々な要因を総合的に判断して、むし歯リスクを評価します。むし歯を引き起こす主な要因は以下の通りです。

細菌の数が多い

むし歯の原因となる細菌の数が多いほど、むし歯のリスクは高くなります。

生活習慣

食習慣や歯磨き習慣などの生活習慣も、むし歯リスクに大きく影響します。具体的には、以下の様な項目が挙げられます。

項目詳細
食事の回数間食が多いなど、飲食の回数が多いと、口の中が酸性になりやすく、むし歯リスクが高まります。
甘いものの摂取頻度砂糖を多く含む食品や飲料を頻繁に摂取すると、むし歯リスクが高まります。
歯磨き習慣歯磨きの頻度や時間、方法が適切ではない場合、むし歯リスクが高まります。

その他の要因

上記の要因以外にも、唾液の分泌量や、フッ化物の使用状況、全身疾患の有無など、様々な要因がむし歯リスクに影響を与えます。例えば、唾液には、口の中の細菌を洗い流したり、酸を中和したりする働きがありますが、唾液の分泌量が減少すると、むし歯リスクが高まります。

CAMBRAに基づいたむし歯予防のメリット

CAMBRAに基づいた虫歯予防には、従来の方法と比べて多くのメリットがあります。主なメリットとして、以下の3つが挙げられます。

個別性に合わせた予防ができる

CAMBRAでは、個人のリスク要因に基づいて、それぞれに最適な予防方法を提案します。例えば以下のようなものを組み合わせて行います。

・歯磨きの方法や頻度
・食生活の改善
・フッ化物塗布など

より効果的な予防ができる

従来の一律的な予防方法では、むし歯リスクが高い人にとっては十分な効果を得られない場合がありました。CAMBRAでは、リスクの高い部分を重点的に予防するため、より効果的にむし歯を予防できます。

将来のむし歯リスクを抑えられる

CAMBRAでは、現在のむし歯だけでなく、将来的なむし歯リスクも予測します。リスクを予測することで、早めに対策を講じることができ、生涯にわたって健康な歯を維持することにつながります。

CAMBRAで自分のむし歯リスクを知ろう! 

それではご自身の虫歯リスクをCAMBRAを用いてチェックしてみましょう!それぞれの質問項目に当てはまる点数の合計を出してみてください。(6歳~成人用)

ステップ1

当てはまれば1つ3点

□最近、歯医者や検診でむし歯を指摘された
□3年以内に虫歯治療を受けた

当てはまれば1つ1点

□歯磨きがうまくできない
□1日3回以上間食をする(砂糖入りのコーヒーや紅茶、清涼飲料水も含む)
□常に口が乾いている
□矯正治療中である

ステップ2

当てはまれば1つ-1点

□フッ素入りの歯磨き粉を1日1回使用している
□フッ素入りの歯磨き粉を1日2回使用している
□フッ素入りの洗口液を1日1回使用している
□が常に唾液で潤っていると感じる

ステップ3

上記合計値を合算し、総合得点を出しましょう。

(ステップ1の合計)+(ステップ2の合計)=むし歯のリスク

となります。

リスク分類合計点数メンテナンス間隔レントゲン間隔
ローリスク−4〜−21年フッ素歯研磨剤(1450ppm)1日2回のブラッシング
ミドルリスク−1〜+26ヶ月フッ素歯研磨剤(1450ppm)1日2回のブラッシング
ハイリスク+3〜4〜6ヶ月1日1回寝る前にF洗口(500ppm)
※学校等でフッ素洗口を行っている場合は、不要です。
※歯周病のリスクによってはメンテナンス間隔が短くなります。

ローリスク:疾患のサインがなく、リスクの原因もほとんどないか全くない場合、防御力が高いと判断されるため、このカテゴリーに分類されます。

ミドルリスク:明らかにハイリスクではないが、ローリスクとも言い切れない場合に該当します。この場合、細菌培養などの検査を行い、経過を注意深く観察します。

ハイリスク: 1つ以上の疾患のサインがある場合、このカテゴリーに分類され、ハイリスクとして扱われます。

それぞれのリスク分類に応じて虫歯予防や治療などが行われます。

Featherstone et al. (2021) Front Oral Health 2 : 656558 DOI: 10.3389/froh.2021.656558 より引用改変

むし歯になりやすい人にオススメ!むし歯予防方法

1.フッ素

フッ素は、唯一虫歯予防に有効な成分であると言われています。そのため、フッ素入りの研磨剤や洗口液を使用すると、約24%の虫歯抑制効果があるというデータもあります。[1]

そのため、歯磨き粉は高濃度フッ素配合(ラベルに1450ppmと記載しているもの)をおすすめします!

そして、フッ素洗口液を使って寝る前にブクブクうがいをしましょう。洗口は下を向かずに真っ直ぐ前を向いて行うようにしましょう。

2.甘い物を控えましょう

コーヒーや紅茶に入れる砂糖も要注意です。水分補給をする際にはお茶やお水などの糖分が入っていないものにしてください。

甘いものを摂取する場合は食間ではなく、食後に摂取しましょう!

 

3.歯医者さんに行きましょう

定期的に歯科医院へ通院し、歯のクリーニングや歯磨き指導を行ってもらいましょう。毎日歯磨きをしていても、ご自身のブラシの当て方や歯並びによって汚れが残りやすい部分があります。歯科医院では、それぞれの歯並びに応じたブラッシング指導を行ってくれます。

また、定期的に口腔内のチェックをしてもらいむ歯の早期発見、早期治療に対応できるのです。いつまでも健康な歯を保つために定期的なチェックを受けましょう。

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参考文献

[1]小児および青少年の虫歯予防のためのフッ化物配合歯磨き|https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12535435/

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