「健康寿命」という言葉をご存知でしょうか?平均寿命が延びる現代において、単に長く生きるのではなく、心身ともに健康な状態で過ごせる期間、「健康寿命」をいかに延ばすかが重要視されています。そして、この健康寿命を維持していく上で、歯の健康が密接に関わっているといわれています。
そこで今回は、健康寿命を向上させるための方法を解説していきます。
歯の健康が左右する未来とは
厚生労働省の発表によると、2021年の日本人の平均寿命は、男性81.47歳、女性87.57歳と過去最高を更新し続けています。※1 しかし、一方で病気や怪我により介護が必要となる期間も増加傾向にあります。健康寿命は平均寿命と比較すると、男性で約9年、女性で約12年も短く、この差をいかに縮めるかが課題となっています。
健康寿命を脅かす、歯の喪失リスク
歯の健康と健康寿命は一見関係ないように思えるかもしれません。しかし実際には、歯を失うことは健康寿命を縮める大きな要因の一つとなり得ます。歯を失う主な原因は、虫歯と歯周病です。特に歯周病は、歯茎の炎症から始まり、放置すると歯を支える骨を溶かしてしまいます。最終的には歯を失うことにつながってしまうのです。歯周病は自覚症状が出にくいため、気づかないうちに進行しているケースも少なくありません。
歯を失うと広がるリスク:食事、会話、そして全身の健康への影響
歯を失ってしまうと、単に食事が不便になるだけではありません。全身の健康にも様々な悪影響を及ぼす可能性があります。
影響 | 詳細 |
食事の楽しみの減少 | 硬いものが噛みにくくなる、食べ物が詰まりやすくなるなど、食事を楽しめなくなることがある。 |
発音障害 | 歯は発音にも関わるため、歯を失うことで発音が不明瞭になることがある。 |
顔貌の変化 | 歯を失うと、頬がこけたり、口元がたるんだりするなど、顔貌が変化することがある。 |
全身疾患のリスク増加 | 歯周病菌が血管に入り込むことで、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを高める可能性が指摘されている。 |
歯の健康は全身の健康へ直結!そのメカニズムを解説
歯周病菌は、歯茎の炎症を引き起こすだけでなく、血液中に入り込むことで全身に悪影響を及ぼすことが分かっています。
歯周病が引き起こす様々な病気
歯周病は、様々な全身疾患のリスクを高める要因となることが報告されています。例えば、心臓病、糖尿病、肺炎、早産・低体重児出産などです。その理由は歯周病菌が血液中に入り込むのが原因です。歯周病菌が血液中に入り込むと、血管の内壁に炎症を引き起こします。すると動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める可能性があるのです。
また、歯周病によって体内の慢性炎症が続くことで、インスリンの働きが阻害され、糖尿病が悪化する可能性もあります。
栄養バランスの乱れ:歯で噛めない影響
歯を失ったり、噛む力が弱まったりすると、食べ物を十分に噛み砕くことができず、消化不良を起こしやすくなります。また、柔らかいものばかり食べるようになり、栄養バランスが偏ってしまう傾向も。栄養バランスの乱れは、免疫力の低下や様々な疾患のリスクを高めることにつながります。
口内環境とメンタルヘルスの関係
歯を失うと、人前で思い切り笑えなくなったり、会話に抵抗を感じたりする方がいらっしゃいます。精神的なストレスを抱えるケースもあり、対人関係に影響が出ることもあります。このような精神的なストレスは、心身の健康に悪影響を及ぼす可能性が考えられます。
今日から実践!歯を守るためのセルフケア
健康寿命を延ばすためには、歯の健康を維持することが重要です。そのためには、毎日のセルフケアを習慣化し、定期的に歯科医院で検診を受けることが大切です。
毎日の歯磨きを見直そう:正しいブラッシング方法
歯ブラシを選ぶ際は、自分の歯や歯茎の状態に合ったものを選びましょう。歯ブラシの毛先は、硬すぎず、柔らかすぎないものがおすすめです。また、歯ブラシは1〜3ヶ月を目安に交換しましょう。
歯磨き粉は、フッ素配合のものがおすすめです。フッ素には、歯のエナメル質を強化し、虫歯を予防する効果があります。
<正しいブラッシング方法>
歯ブラシを歯に軽く当て、細かく動かして汚れを落とします。そして歯と歯茎の境目は、歯ブラシを斜め45度に当てて、優しくブラッシングしましょう。
歯間ケアでさらに徹底:デンタルフロス・歯間ブラシの効果的な使い方
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れは約40%しか落とせていないと言われています。歯間ブラシやデンタルフロスを使うと、歯ブラシでは届かない歯と歯の間の汚れを効果的に取り除けます。歯間ブラシやデンタルフロスは、自分の歯間に合ったサイズを選び、力を入れすぎずに優しく使用するようにしましょう。
歯を守る食生活:砂糖との上手な付き合い方
砂糖を多く含む食品や飲料は、虫歯菌の栄養となり、酸を産生することで歯を溶かしてしまう原因となります。砂糖を摂取する際は、量と頻度に気を付けましょう。ダラダラと甘いものを食べ続けることは避け、時間を決めて食べるように心がけましょう。また、食後は、歯磨きやうがいをして、口の中を清潔に保つことが大切です。
定期的な歯科検診:早期発見・早期治療の重要性
虫歯や歯周病は、初期段階では自覚症状が出にくい病気です。そのため、定期的に歯科医院で検診を受け、早期発見・早期治療が重要です。歯科医院では、専門的なクリーニングやフッ素塗布を受けることもでき、より効果的に歯の健康を守ることができます。
歯の健康投資のススメ:将来の医療費削減にも
「歯の治療は痛いし、費用もかかるから…」と、ついつい後回しにしてしまいがちですが、健康寿命を考えると、歯の健康への投資は非常に重要です。
保険診療と自由診療の違い:自分に合った治療法とは?
日本の健康保険制度は、最低限の医療を国民が等しく受けられることを目的としています。そのため、歯科治療においても保険診療では、必要最小限の治療が中心となります。一方、自由診療は、保険診療ではカバーできない、より質の高い材料や高度な技術を用いた治療を選択できます。費用は高額になりますが、見た目や機能面でより優れた治療結果を得られる可能性があります。
予防歯科にかける費用対効果:未来の健康への投資
歯の治療は、虫歯や歯周病が進行してからの治療よりも、予防のために定期的に歯科医院に通う方が、結果的に費用を抑えられる場合が多いです。また、歯の健康は、全身の健康維持にもつながり、将来的な医療費の負担軽減にもつながります。未来の健康への投資として、予防歯科を検討してみてはいかがでしょうか。
歯の健康に関するよくある質問
**Q. 歯周病は治るの?**
A. 歯周病は、早期発見・早期治療を行えば、治すことが可能な病気です。しかし、重症化すると、歯周組織が大きく破壊され、歯を失ってしまうこともあります。歯周病の治療は、歯石の除去や歯周ポケットの洗浄などを行い、歯周病菌の数を減らすことが重要です。
**Q. 歯磨き粉はフッ素配合のものを使った方が良いの?**
A. はい、フッ素には、歯のエナメル質を強化し、虫歯を予防する効果があるため、フッ素配合の歯磨き粉の使用をおすすめします。フッ素配合の歯磨き粉は、市販のものから歯科医院で購入できるものまで、様々な種類があります。ご自身の歯の状態や好みに合わせて選びましょう。
まとめ:いつまでも自分の歯で、笑顔あふれる未来を
歯の健康は、健康寿命を延ばすための重要な要素です。毎日のセルフケアと定期的な歯科検診を心がけ、いつまでも自分の歯で、笑顔あふれる未来を送りましょう。
神部歯科医院では、「健康寿命の向上」を理念に診察しております。いつまでもいきいきと豊かな生活を送れるよう、一人一人の患者さまに真摯に向き合いながら治療を行います。初診カウンセリングでは、患者さまが安心・納得して治療に臨めるように時間をかけてお話を伺いますのでぜひ一度、神部歯科医院へお越しください。
参考文献
[1]https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/dl/life21-02.pdf